旅の記録2017
東海道
(赤坂→御油→国府)
[愛知県豊川市]
Tōkaidō(Akasaka→Goyu→Kō)
2017年3月18日(1日目)
<豊 川 小 牧>

豊川稲荷駅より乗車した名鉄一宮行き急行列車(豊川線内は各駅に停車)から降車したのは名古屋本線と合流する国府(こう)駅。
次の目的地の最寄り駅は普通列車しか停車しないため、1・2番線ホームで普通列車を待つ。
名鉄岐阜行き特急列車を見送り、豊川線から国府止まりの普通列車が到着した後、ようやく東岡崎行き普通列車が入線。

わずか数分の乗車で東岡崎行き普通列車から降車。
ここは国府から2つ先の名電赤坂駅。
跨線橋はなく、名古屋方面・豊橋方面ともホームの豊橋寄りに小さな駅舎と改札口を設けている(ただし無人)。
音羽川に架かる橋、その名も音羽橋を渡る。
左の画像は音羽橋から下流方向を、右の画像は上流方向を見て撮影したもの。
音羽川はこの先もその名を変えず、豊川市御津町で三河湾に注ぐ。
音羽橋を渡ると、十字路の一角に常夜灯が。
常夜灯の裏には秋葉神社(といってもお社だけだが)がある。
さらに進むと、「赤坂紅里(あかさかべにざと)」という丁字の交差点に到着。
ここは、名電赤坂駅からずっと歩いてきた愛知県道332号と愛知県道374号の交点で、県道332号の終点でもある。
そして、その一角にあるこの公園は「赤坂宿公園」。
この一帯は東海道の旧宿場町「赤坂宿」だったところ。
県道374号(旧東海道)をまずは北西に進む。
程なくして進行方向左側に見えてきたのは旅籠「大橋屋」。
正徳6年(西暦1716年)に建てられたというこの旅籠は平成27年に廃業。
今後、豊川市指定文化財であるこの建物は一般公開に向けて耐震工事などが行われるらしい。
大橋屋からさらに進むと、進行方向右側に小さな紅白の柵が2つ。
ここが赤坂宿の高札場跡。
高札場跡の向かいには「お休処よらまいかん」がある。
平成14年に旅籠をイメージして建てられた無料休憩施設らしいが、それ以前にはそれなりに重要な公共施設があったのだろう、傍らには「赤坂町道路元標」がある。
なお、左に少し見切れている「ペットが見ている飼い主のマナー」というマナー啓発看板の主は音羽町。
旧赤坂宿一帯は周辺自治体との合併により赤坂町→音羽町→豊川市と所在する自治体名が変わっていった。
「よらまいかん」から少し進むと、進行方向右側の駐車場に説明板が。
説明板によると、ここは江戸時代初期に「赤坂陣屋」(代官所)があった場所らしい。
元禄2年に赤坂保育園付近の「神木屋敷」に移転したが、廃藩置県後に三河県役所がここに置かれ、明治5年に廃止されたという。
さらに進むと、緩やかな上り坂の先に旧宿場町らしい古い家と石鳥居。
その先の、赤い車が駐車しているあたりが赤坂宿の西側の「見附」跡。
次の宿場は名鉄名古屋本線で4駅先の藤川駅が最寄りとなる「藤川宿」。
(藤川駅も普通列車のみ停車。)
「十王堂跡」の標柱が建つ丁字路を左折した先の道は「宮路山」への登山道。
石鳥居の先には「杉森八幡社」が鎮座する。
この地はかつて伊勢神宮領の御厨だったが、大宝2年(西暦702年)に持統上皇が東国巡幸で当地に滞在中、大神宮・八幡社を勧請されたという。
拝殿と楠(豊川市指定天然記念物)。
根株が一体化していてそこから2本の木が成長していることから「夫婦楠」と呼ばれているという。
杉森八幡社の境内。 「赤坂の舞台」(豊川市指定有形民俗文化財)。
明治になってから赤坂の芝居愛好者が中心となって建設を呼びかけたものらしい。
県道374号に戻り、南東に引き返す。
右画像の奥に見える正法寺は厩戸皇子(聖徳太子)ゆかりの寺らしいが、真宗大谷派。
赤坂保育園(本陣跡)は隣接地にある。
大橋屋の前を通過し・・・
赤坂紅里交差点まで戻ってきた。
宝永7年(西暦1711年)時点の赤坂宿町並の図と高札のレプリカがある。
そのまま南東に進むとすぐ、進行方向右側にあるこの場所が赤坂宿本陣跡の1つ、平松家。
現在も「平松」と書かれた表札がかかっていた。
赤坂宿問屋場(伝馬所)跡。
今では普通の家が建つ。
このあたりが赤坂宿の東側の見附跡。
そして奥には・・・
音羽川の支流・天王川に架かる名もなき橋の先が「御油の松並木」(国指定天然記念物)。
なお、この橋を境として手前が赤坂町、先が御油町である。
「御油の松並木」の天然記念物指定は戦時中の昭和19年11月7日。
これは、全国的に松が燃料として切り倒されていることを憂慮した御油町の町民が、松並木を守るために天然記念物指定への働きかけを行ったためという。
ここも県道374号の区間内だが、左画像の路面の色が変わっているあたりなどは意図的に?車道の幅を1車線分まで狭めている。
松並木と音羽川の間には「御油松並木公園」が整備されている。
右画像は御油松並木公園から見た松並木。
松並木もそろそろ東端に近づいてきたところにコミュニティバスの停留所が設置されている。
その名も「松並木東」。
ここが「御油の松並木」の東端。
西側より立派な「天然記念物 御油ノ松並木」の標柱。
そして、ここからが東海道御油宿のようで、この場所は「御関札立掛場」だったらしい。
訪問日には「寛文元年十一月二十一日 松平丹波守宿」と記された御関札が立っていた。
御関札は大名が宿場に泊まる際に、本陣と町役人が宿泊日と藩主名を記して宿場の入口に立て掛けた札。
なお、「御油の松並木」を挟んだ赤坂宿と御油宿の間はわずか16町(約1.7km)しか離れておらず、東海道の宿駅間距離としては最短。
「御関札立掛場」の向かいには十王堂があった。
赤坂宿の十王堂はすでに失われていたが、御油宿の十王堂は明治中期に火災にあったものの再建された。
なお、十王とはポケットザウルス・・・もとい冥界で死者の罪業についての裁判を行う10人の王。
一般には冥界で罪を裁く者といえば閻魔大王だけが有名だが、仏教では死者は閻魔大王以外に秦広王、初江王、宋帝王、五官王、変成王、太山王、平等王、都市王、五道転輪王を加えた十王による裁判を順次受けた上で次に生まれてくる所が定まるとされている。
御油の旧宿場町に入り、しばらく進むと「イチビキ」第一工場脇に小さな石碑が。
ここが御油宿の本陣の1つ「鈴木半左衛門家」跡地らしい。
※この画像は北西方向を向いて撮影。
御油郵便局前にある「松並木資料館←0.1km」を見て現在時刻を見たら、まだ16時になっていなかった。
ということで16時に閉館してしまう「御油の松並木資料館」(入館無料)で貴重な近世史料を見学することができた。
御油の松並木資料館を後にして、御油郵便局前まで戻る。
この場所、現在は十字路になっており県道374号はこのまま直進だが、近世にはL字の桝形になっていて右折するしかなかった。
郵便局前の交差点を右折して旧横町を進むと、進行方向左側に「問屋場跡」がある。
現在は未舗装の駐車場。
次の交差点も元は桝形だったが、北と西に道が開かれている。
北西の御油保育園園庭側は「高札場跡」、
その斜向かいは旅籠「戸田屋」の跡。
戸田屋はエルヴィン・フォン・ベルツ(『ベルツの日記』で知られるお雇い外国人医師)の妻・花の実家。
この辺りは御油宿の中でも「茶屋町」と呼ばれていた。
今では宿場町としての賑わいを失い、閑静な住宅街に。
御油橋から見た上流方向。
奥に見える橋は県道374号の新御油橋。
音羽川に架かる御油橋を渡る。
「昭和十年六月改築」とあり、現在の姿でも80年以上の歴史がある。
御油橋から見た下流方向。
奥に見える橋は県道368号の御油大橋。
御油橋を渡り切ってから振り返る。
しばらく進むと、県道368号との交差点に着いた。
まずはこれまで歩いてきた道を振り返る。
そして、交差点とその先の道は・・・
県道のほうが格上なのでセンターラインの引き方は仕方ないとしても、信号も横断歩道もないとは・・・。
左折すると、中日新聞の販売店前に常夜灯と道標。
石造りの道標は「秋葉山三尺坊大権現道」と「國幣小社砥鹿神社道」。
「秋葉山三尺坊大権現」は浜松市天竜区にある秋葉寺。
砥鹿神社は豊川市内にある三河国一宮の神社(最寄り駅は飯田線の三河一宮駅)。
そして、木の道標には「三州御油宿 これより姫街道 遠州見付宿まで」。
ここは東海道と、その迂回道である姫街道(本坂越)の追分(分岐点)だった。
現在では、かつての支線が立派な県道に、本線はその名を新しい道(国道1号)に譲って市道に甘んじている。
さすがにこの道幅を横切るにはいかないので、少し東に回り道して「行力」交差点(県道368号と県道374号の交点)で県道368号を越え、旧東海道に戻った。
すぐに県道374号が合流し、再び旧東海道=県道374号となる。
合流点からほど近い蒲郡信用金庫国府支店の敷地内にある植え込みには「御油一里塚跡」の標柱があり、「江戸日本橋ヨリ七六里」と刻まれている(画像は北を向いて撮影)。
さらに南下すると大社神社がある。
北側の参道入口には「忌避期間遥拝所」の標柱がある。
身内に不幸があって参拝を控えるべき期間には境内に入らず、ここから拝むという意味だろうか。
2時間余りかかって国府駅に戻ってきた。
当初計画では国府駅での長時間の乗り換え待ちを嫌って、豊川稲荷から国府駅到着後三河国分寺跡、国分尼寺跡や総社などを見に行く予定だった。
しかし、豊川稲荷周辺で思ったよりも時間と体力を消費してしまったため赤坂・御油を優先。
戻ってきた時間はまだ16時半前だったが、足の疲労がかなりひどいため今日の観光はこれで打ち切った。

国府駅から名鉄岐阜行き急行列車に乗り、金山で下車。
名古屋市営地下鉄名城線に乗り換え、大須で夕食を取った後、栄のホテルにチェックイン。


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